上記のように悩んでいませんか?
個人再生は財産の処分なしで借金を5分の1まで減額できる、非常に便利な債務整理の1つです。
ただし、大きなメリットがある一方で、もちろんデメリットもあります。
メリットとデメリットの両方を知っておくことで、今後の手続き方法を検討する重要な判断材料となるでしょう。
この記事では、個人再生の基本的な概要からメリット・デメリット、手続きの流れについて解説しています。
債務整理で借金の負担を少しでも軽くしたい人は、ぜひ参考にしてください。
個人再生のメリット | 個人再生のデメリット |
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個人再生とは?
【個人再生の特徴】
- 借金を5分の1まで減額できる
- 裁判所を通した大掛かりな手続き
- 解決までの期間は6ヶ月〜1年程度
- 借入理由を問われない
個人再生とは、裁判所に「返済が困難な状況である」ことを認めてもらい、借金を大幅に減額してもらう債務整理の1つです。
減額幅は最大5分の1で、減額された借金を3〜5年かけて返済していきます。
大幅に借金を減らすことができますが、自己破産とは違い、住宅を手放すことなく手続きを進めることも可能です。
自己破産の場合は、ギャンブルや浪費が借金の理由だと利用できない場合があります。
しかし、個人再生は借入理由に関係なく誰でも利用可能です。
裁判所を通した大掛かりな手続きなので、解決には6ヶ月〜1年程度の期間がかかります。
個人再生できる条件
個人再生するための重要な条件は、次の2つです。
個人再生が認められると、3〜5年の期間をかけて再生計画にしたがって返済を続けていくことになります。途中で返済ができなくなってしまうと、再生計画が取り消されて減額された借金も元通りになってしまいます。
せっかく個人再生が開始しても、最後まで返済を続けられなければ意味がありません。個人再生が認められるためには、再生計画を実行するための安定した収入が必要です。
アルバイトを転々としている場合や、個人事業主で収入の変動が激しいような場合には、安定した収入がないとして個人再生は認められません。
住宅ローンを除く債務の総額が5,000万円を超える場合には、個人再生ではなく民事再生の対象となります。民事再生は、個人再生よりも利用する条件は厳しくなっています。
個人再生のメリット6つ
個人再生の主なメリットは、以下の6つです。
【個人再生の主なメリット】
- 借金を5分の1まで減額できる
- 財産を処分しなくてもいい
- 3〜5年の長期分割払いができる
- 返済期間に利息が発生しない
- 借入理由を問われない
- 職業や資格の制限がない
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.借金を5分の1まで減額できる
個人再生の代表的なメリットは、借金を最大5分の1まで減額できることです。
個人再生の減額幅は、借入総額によって異なります。
借入総額 | 最低弁済額 |
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100万円以下 | 0円 |
100万〜500万円 | 100万円 |
500万〜1500万円 | 借入総額の5分の1 |
最低弁済額とは、最低限返済しなくてはならない金額を指します。
つまり、借入総額が700万円の人であれば、「最低でも140万円は返してくださいね」ということです。
ただし、借入額が100万〜200万円の人だと減額幅が小さく、他の債務整理を選んだ方がメリットが大きいケースがあります。
適切な債務整理を判断するためには、法律の知識と経験が必要です。自分で判断するのは非常に難しいので、無料で相談できる弁護士・司法書士に教えてもらいましょう。
2.財産を処分しなくてもいい
個人再生は原則として、財産を処分する必要がありません。
住宅ローンが残っていたとしても個人再生であれば、ローンの返済を続ける条件で自宅を守ることができます。
借金が全額免除となる自己破産を選択すると、せっかく購入したマイホームを処分しなければいけません。
個人再生であれば自宅だけでなく、自動車・保険・株式などの財産を処分しなくても借金を大幅に減額できるのです。
3.3〜5年の長期分割払いができる
個人再生の手続き後は、減額された借金を3〜5年かけて返済します。
基本的には3年ですが、経済状況的に3年での返済が難しい場合や、3年以内に大きな支出が予定されている場合は最長で5年まで返済期間を延長してくれます。
「借金の大幅減額」「3〜5年の長期分割払い」によって、毎月の返済額は大きく下がるでしょう。
個人再生をすると金銭的に余裕が生まれるため、精神的にも大きなメリットがあります。
4.返済期間に利息が発生しない
個人再生の手続き後に、返済が再開してからは利息が発生しません。
せっかく個人再生をして借金が減額されて長期分割払いの許可が決定しても、今まで通りの利息が発生するとメリットを感じないでしょう。
裁判所に定められた計画通りに返済していけば、利息は一切発生しないため確実に元本を減らしていけます。
個人再生をすると「金利が高くていくら返済しても借金がなくならない」こんな状況に陥ることはありません。
5.借入理由を問われない
自己破産は借入理由がギャンブルや浪費の場合、免責が下りない(借金が免除されない)可能性があります。
しかし、個人再生は借入理由を問われないため、どんな理由であっても関係ありません。
借入理由により自己破産を諦めた人には、大きなメリットでしょう。
6.職業や資格の制限がない
個人再生は、職業や資格の制限が一切かかりません。
しかし、自己破産の場合は、以下のような職業や資格が手続き中のみ制限されます。
【自己破産で制限がかかる職業や資格の例】
- 弁護士
- 税理士
- 司法書士
- 行政書士
- 警備員
- 生命保険募集人
- 宅地建物取引士
- 旅行業務取扱管理者
- 貸金業者
- 建設業者
制限がかかるのは手続き中のみですが、上記の仕事に就いている人は生活に大きな影響があるでしょう。
個人再生であればこのような制限がないため、仕事に支障をきたすことはありません。
個人再生のデメリット4つ
個人再生の主なデメリットは、以下の4つです。
【個人再生の主なデメリット】
- ブラックリストへの登録は避けられない
- 借金の全額免除は認められない
- 手続き期間が長く費用も高額
- 債務整理の中で1番手続きが難しい
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.ブラックリストへの登録は避けられない
個人再生をすると、ブラックリストへの登録は避けられません。
ブラックリストに登録されると、以下のような生活への影響があります。
基本的にお金を借りるための審査は、最低でも5年は通らないでしょう。
ただし、ブラックリストへの登録は個人再生だけのデメリットではありません。
任意整理や自己破産など、手続き方法に関係なく、債務整理をするとブラックリストに登録されます。
ブラックリストについては、以下の記事で詳しく解説しています。
2.借金の全額免除は認められない
自己破産をすると、借金の全額免除が認められます。しかし、個人再生の場合は、全額免除が認められることはありません。
借金を5分の1まで減額できるものの、最低でも100万円は返済することになります。
そのため、3〜5年以内に100万円を返済できる経済状況が、個人再生の最低限の利用条件です。
3.手続き期間が長く費用も高額
個人再生の手続きは複雑で、最低でも6ヶ月、長い場合は1年以上かかるケースもあります。
債権者との交渉があるため、場合によってはさらに長期化することも考えられるでしょう。
また、裁判所への費用も高額で、20万〜30万円はかかります。
4.債務整理の中で1番手続きが難しい
個人再生は債務整理の中で、もっとも手続きが難しいとされています。
裁判所への対応だけでなく、借入額の正確な調査・財産の正確な計算・再生計画案の作成など、非常に専門的な知識が求められます。
中には「弁護士・司法書士への報酬を払いたくない」という理由から、自力での解決を試みる人もいますが、基本的に成功しません。
状況が悪化する前に、弁護士・司法書士などの法律のプロに相談することをおすすめします。
個人再生はどんな人に向いている?
個人再生には、向いている人と向いていない人がいます。
ここからは、どんな人が個人再生に向いているのかを解説していきます。
【個人再生が向いている人】
- 住宅ローンで購入した自宅を守りたい人
- 借入理由がギャンブルや浪費の人
- 自己破産で制限される資格や職業に就いている人
住宅ローンで購入した自宅を守りたい人
個人再生は「住宅資金特別条項」という制度を利用することで、住宅ローンを個人再生の対象外にできます。
住宅ローンの返済を今まで通り続けることを条件に、住宅ローン以外の借金だけを減額できる制度。
この制度を利用することで、購入した自宅を手放すことなく借金を大幅に減額できます。
自己破産を選択すると、住宅ローンで購入した自宅を処分することになるでしょう。
自宅を守れるかどうかが、自己破産と個人再生の大きな違いです。
借入理由がギャンブルや浪費の人
個人再生は借入理由がギャンブルや浪費の人で、借金の大幅な減額が望めます。
しかし、自己破産の場合は、ギャンブルや浪費のために借金をしていると「免責不許可事由」に該当するため、借金は免除されません。
自己破産による借金の免除が認められないケースのこと。
そもそも、個人再生には免責不許可事由がないため、どんな借入理由であっても借金の減額が認められます。
自己破産で制限される資格や職業に就いている人
自己破産をすると手続き中は、以下の職業や資格に制限がかかります。
【自己破産で制限がかかる職業や資格の例】
- 弁護士
- 税理士
- 司法書士
- 行政書士
- 警備員
- 生命保険募集人
- 宅地建物取引士
- 旅行業務取扱管理者
- 貸金業者
- 建設業者
上記の職業や資格を使って働いている人は、手続き中は仕事ができなくなります。
場合によっては職を失う可能性もあるため、自己破産における大きなデメリットになっています。
しかし、個人再生であれば、このような職業や資格の制限がないのです。
どんな仕事に就いていても今まで通り働くことができますし、個人再生が原因で解雇されることもありません。
個人再生はどんな人に向いていない?
次に、どんな人が個人再生に向いていないのかを解説していきます。
【個人再生が向いていない人】
- 家族に借金を知られたくない人
- 借金に保証人が付いている人
- なんとなく自己破産はイヤだから個人再生を選ぶ人
それぞれ詳しく見ていきましょう。
家族に借金を知られたくない人
個人再生は裁判所を通した手続きになるため、同居している家族に隠すのはかなり厳しいでしょう。
家族に個人再生の手続きがバレるケースは主に、以下の3つです。
家族が保証人になっているケース
個人再生をすると、保証人に必ず連絡がいきます。
そのため、家族が保証人になっている場合、隠すことはできません。
家計収支書を作成するケース
個人再生の手続きでは家計収支書という、同一家計の経済状況を正確に記載した書類を求められます。
家族に収入があるなら、給与証明書の発行をお願いしなければいけません。
家族が官報を読んでいる
個人再生をすると、国が発行している官報という機関紙に氏名や住所が掲載されます。
家族が官報を読んでしまうと個人再生をした経歴がバレてしまいます。個人再生をするのであれば、家族に隠すのは現実的ではありません。
借金に保証人が付いている人
個人再生をすると、保証人に一括返済を求める連絡が届きます。
個人再生や自己破産には債権者平等の原則があるため、一部の借金を除外することはできません。
保証人に内緒で個人再生をすると信頼関係を失うだけでなく、大きなトラブルに発展することもあります。
なんとなく自己破産はイヤだから個人再生を選ぶ人
「財産をすべて失ってしまう」というイメージから「なんとなく自己破産はイヤだ」という人もいます。
しかし、自己破産は借金が全額免除されるという大きなメリットがありますし、生活に必要な最低限の財産は残せます。
手続きにかかる期間も個人再生とあまり変わらないため、生活を立て直すまでの時間はそれほど長くありません。
- 返済能力がない
- 自宅や車などの処分される財産が少ない
- 制限される資格や職業に就いていない
上記のような人は、自己破産も視野にいれて債務整理を検討した方がいいでしょう。
個人再生の手続きにかかる費用は?
個人再生の費用相場は、50〜80万円となっています。
個人再生には「裁判所費用」と「弁護士・司法書士費用」の2つが必要です。
費用の内訳は、以下の通りです。
裁判所の費用 | 弁護士・司法書士の費用 |
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個人再生委員とは、裁判所が認めた場合のみ選任される弁護士で、所有している財産や収入を確認して、再生計画案の作成についてアドバイスをくれます。
個人再生委員が選任されない手続きでは、もちろん「個人再生委員への報酬」はかかりません。
裁判所によって基準が異なるため、費用が不安な人は弁護士・司法書士に相談しておきましょう。
個人再生の流れや期間
最後に、個人再生で借金が減額されるまでの流れを解説していきます。
個人再生は裁判所を通した大掛かりな手続きなので、解決までに6ヶ月〜1年程度はかかるでしょう。
具体的には、以下のような流れで手続きを進めていきます。
【個人再生の流れ】
- 弁護士・司法書士へ相談
- 債権者に受任通知を送る
- 利息の引き直し計算で過払い金を調査
- 申し立てに必要な書類の作成・提出
- 個人再生の手続き開始
- 再生計画案を裁判所に提出
- 再生計画案をもとに決議・意見聴取
- 裁判所が再生計画案の認可を決定
ステップごとに詳しく見ていきましょう。
1.弁護士・司法書士へ相談
まずは、弁護士・司法書士に相談しましょう。
弁護士・司法書士の相談料は1時間5,000〜1万円が相場です。
ただし、債務整理を取り扱っている弁護士・司法書士は、依頼者の経済状況を考慮して、相談料を無料にしているケースが一般的です。
借入状況や経済状況を伝えて、適切な対処法をアドバイスしてくれます。場合によっては無料相談だけで問題が解決することもあります。
借金問題は早めの相談が被害を最小限に抑える秘訣です。毎月の返済に疲れている人は、とりあえず相談しておきましょう。
2.債権者に受任通知を送る
個人再生の手続きを正式に依頼すると、受任通知を弁護士・司法書士が債権者に送ってくれます。
弁護士や司法書士が債務者の代理人となって債務整理を行うことを、債権者に知らせる通知のこと。受任通知を受け取った債権者が、債務者に直接取立てることは法的に禁止されている。
受任通知には、返済や取立てを停止させる法的な効力があります。
この時点から債権者とのやり取りは、依頼した弁護士・司法書士が代理人として対応してくれます。
3.利息の引き直し計算で過払い金を調査
債権者からこれまでの取引履歴を請求して、引き直し計算を行います。
引き直し計算によって、利息を払い過ぎていないかどうかを正確に把握できます。
過払い金が発生していれば、債権者に請求することで、払い過ぎていたお金を取り戻すことが可能です。
4.申し立てに必要な書類の作成・提出
裁判所に申し立てるためには、以下のような書類の提出を要求されます。
【個人再生の申し立てに必要な書類の例】
- 再生手続開始申立書
- 陳述書
- 債権者一覧表
- 家計簿
個人再生の申し立てには非常に多くの書類が必要で、間違いがあればその都度修正して裁判所に再提出を求められます。
意図的な虚偽がある場合は、申し立てが認められた後でも取り消される可能性があるため、正確に作成しましょう。
5.個人再生の手続き開始
申し立てに必要な書類を裁判所にすべて提出すると、個人再生の手続きが始まります。
その後は、裁判所から債権者に向けて、個人再生の手続きが始まったことを知らせる「開始決定書」と、正確な借入額を調査するための「債権届出書」が送られます。
6.再生計画案を裁判所に提出
個人再生の手続きが開始してから3〜4ヶ月以内に、再生計画書を裁判所に提出します。
再生計画書は、今後の返済スケジュールが決まる非常に重要な書類です。
弁護士・司法書士とよく相談して、確実に返済できる無理のない返済方法や期限を設定しましょう。
7.再生計画案をもとに決議・意見聴取
再生計画書を裁判所に提出すると、裁判所が債権者に対して決議・意見聴取を行います。
【小規模個人再生手続の場合】
「債権者の過半数の不同意」もしくは「債権額の2分の1を超える不同意」となると、個人再生は認められず手続きは中止です。
【給与所得者等再生手続の場合】
決議の必要がないため、意見聴取のみなので手続きが中止になることはありません。
「せっかくここまで手続きしたのに中止になるかもしれないの?」と不安になる人もいるでしょう。
しかし、「小規模個人再生手続」と「給与所得者等再生手続」のどちらを選択するかは弁護士・司法書士が正確に見極めてくれるため、それほど心配する必要はありません。
8.裁判所が再生計画案の認可を決定
裁判所がこれまでの手続きをもとに、再生計画案の認可(または不認可)を決定します。
再生計画案が現実的でなかったり、虚偽の情報が見つかった場合は、不許可になるケースもあります。
裁判所から再生計画案が認可された場合は、翌月から返済が再開します。返済期間は3〜5年あるため、手続き前よりも毎月の返済額は大幅に下がるでしょう。
個人再生のメリット・デメリットまとめ
個人再生のメリット | 個人再生のデメリット |
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この記事では、個人再生の基本的な概要からメリット・デメリット、手続きの流れについて解説しました。
個人再生は借金が5分の1まで減額される非常にメリットの大きい手続き方法です。ただし、大きなメリットがある一方で「手続き方法が難しい」というデメリットもあります。
債務整理の中でもっとも複雑な制度なので、自力での手続きはほぼ不可能といえるでしょう。
また、借金の救済制度は個人再生だけではありません。
個人再生を検討しているのであれば、まずは相談無料の弁護士・司法書士に問い合わせてみましょう。