上記のように悩んでいませんか?
たしかに、特定調停は他の債務整理と比べると行っている人も少なく、どんな制度なのか知らない人も多いでしょう。
この記事では、特定調停の基本的な概要とメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
借金の負担を軽くしたいと考えている人は、ぜひ参考にしてください。
特定調停のメリット | 特定調停のデメリット |
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特定調停とは?
特定調停とは、債権者と債務者が話し合って、支払い方法を調整する手続きのことです。
任意整理と非常によく似ていますが、最大の違いは「裁判所の介入があるかどうか」です。
ただし、通常の裁判のように勝ち負けを決めるわけではなく、あくまでも「話し合いをするための手続き」です。
特定調停は簡易裁判所に申し立てを行い、2名の調停委員の元で話し合いを進めていきます。
その後、特定調停に成功すると、原則として3年間の返済計画が立てられます。
つまり、支払い期間の延長が認められるので、「毎月の返済額が下がる」というのが特定調停のメリットです。
また、「将来分の利息カット」「残っている借金を3〜5年で返済」で和解、というのが任意整理の主な和解案で、特定調停ならではのメリットというわけではありません。
そのため、成功率の高い任意整理を選択する人が多く、特定調停を選択する人は減少傾向にあります。
そもそも「特定調停をしたい」と考えている人は「弁護士・司法書士費用が払えない・払いたくない」と考えているケースがほとんどです。
しかし、最近は相談料・着手金が無料で初期費用は0円、分割払いや後払いに応じてくれる弁護士・司法書士も増えています。
まずは無料相談で、本当に特定調停が自分に適切な手続きなのかどうかを判断してもらいましょう。
特定調停のメリット7つ
次に、特定調停のメリットを解説していきます。
特定調停の代表的なメリットは、以下の7つです。
【特定調停のメリット】
- 自分で手続きができる
- 費用が安い
- 債権者と直接交渉しない
- 裁判所が返済・取立てを停止してくれる
- 職業や資格の制限がない
- 借入理由を問われない
- 財産を手元に残せる
それぞれ詳しく解説していきます。
1.自分で手続きができる
特定調停は、比較的手続きが簡単で自分で手続きをする人がほとんどです。
裁判所への申し立ては書記官がサポートしてくれますし、債権者との話し合いは調停委員が介入してくれます。
調停委員はあくまでも中立の立場として話し合いを進めてくれるため、法律の知識がない人でも理解できるように配慮してくれるでしょう。
2.費用が安い
債務整理の種類に関わらず、弁護士・司法書士に依頼すると費用がかかります。
特に高額な自己破産の場合は、最低でも30万〜40万円程度はかかるでしょう。しかし、弁護士・司法書士への依頼が必要ないため、専門家への報酬は不要です。
特定調停の費用は債権者1社につき1,000円程度と非常に安く、経済的な負担はもっとも少ない債務整理と言えるでしょう。
3.債権者と直接交渉しない
特定調停は申し立てをした裁判所で話し合いを行い、調停委員と一緒に問題の解決を目指すものです。
債権者と直接交渉するわけではないため、口論になる心配はありません。
調停委員は法律の知識がない債務者をサポートしてくれるため、話し合いや交渉が苦手な人でも安心です。
4.裁判所が返済・取立てを停止してくれる
特定調停を申し立てると、裁判所が債権者に「開始通知書」を送付してくれます。
開始通知書を受け取った債権者は、特定調停の手続きが完了するまで取立てを停止しなければなりません。
また、特定調停の手続き中は返済からも解放されるため、一時的ではありますが精神的な負担も軽減します。
5.職業や資格の制限がない
特定調停をすることで、特定の職業や資格が制限されることはありません。
一方で、自己破産を行うと、以下のような職業や資格に制限がかかります。
【制限がかかる職業や資格の例】
- 弁護士
- 税理士
- 司法書士
- 行政書士
- 警備員
- 生命保険募集人
- 宅地建物取引士
- 旅行業務取扱管理者
- 貸金業者
- 建設業者
特定調停が原因となって仕事を失うことはありません。
6.借入理由を問われない
ギャンブルや浪費など、借金の理由を人に知られたくない人も多いでしょう。
特定調停は原則として借入理由を問われません。
借入理由がどのようなものであっても申し立ては可能で、特定調停の結果に影響がでることもありません。
7.財産を手元に残せる
特定調停は、対象となる債権者を自由に選べます。
そのため、住宅ローンや自動車ローンを組んでいる人は、ローンを特定調停の対象から外すことで財産を守れます。
特定調停で決まった返済方法を守っていれば、その他の財産を強制的に差し押さえられることもありません。
特定調停のデメリット6つ
次に、特定調停のデメリットを解説していきます。
特定調停の代表的なデメリットは、以下の7つです。
【特定調停のデメリット】
- 裁判所への出頭が平日のみ
- 書類作成に手間がかかる
- 返済・取立てはすぐに停止しない
- 成功率が低い
- ブラックリストに登録される
- 過払い金請求を同時に行えない
それぞれ詳しく解説していきます。
1.裁判所への出頭が平日のみ
裁判所への出頭は平日のみなので、土日休みの仕事に就いている人は負担になるでしょう。
債権者1社につき最低でも2回は出頭する必要があるため、借入先が多い人はその分だけ出頭する回数が増えます。
2.書類作成に手間がかかる
特定調停は弁護士・司法書士に依頼しないため、すべての手続きを自分で行います。
他の債務整理と比べて手続きは簡単ですが、裁判所に提出する書類なので間違いは許されません。
書類作成のみ代行してほしい人は、費用の安い司法書士に依頼するといいでしょう。
3.返済・取立てはすぐに停止しない
弁護士・司法書士に債務整理を依頼すると、即日で返済や取立てを停止してくれます。
しかし、特定調停の場合は申し立てが完了してから裁判所が開始通知書を送るため、すぐに返済や取立てが停止するわけではありません。
債権者からの取立てが厳しく、今すぐに止めてほしい人は弁護士・司法書士に相談してみましょう。
4.成功率が低い
特定調停は成功率が非常に低く、ほとんどの人が失敗に終わっています。
裁判所が公表している資料によると、特定調停の申立て件数「2,423件」に対して、成立件数は「349件」となっています。
つまり、成功率は14%程度しかありません。
特定調停は、債権者と債務者がお互いに納得できなければ不成立となります。
債権者だけでなく、債務者にとっての明確なメリットがなければ成功することはありません。
5.ブラックリストに登録される
債務整理を行うとブラックリストに登録されます。
ブラックリストに登録される期間は5〜7年で、その間は社会的な信用が低いため、クレジットカードやローンの審査が通らなくなります。
ただし、ブラックリストの登録は特定調停だけでなく、すべての債務整理に共通しているデメリットです。借金の負担を軽くしたいのであれば受け入れるしかありません。
6.過払い金請求を同時に行えない
特定調停を行うと、引き直し計算をします。
引き直し計算とは、利息制限法に基づいてこれまでの取引を計算し直して、本来払う必要のなかった金額を正確に計算すること。
現在の利息制限法の上限金利で計算するため、過払い金が発覚する可能性もあります。
過払い金が見つかった場合は、債権者に対して返還請求することでお金が戻ってきますが、特定調停と過払い金請求を同時に行うことはできません。
過払い金を取り戻すためには、弁護士・司法書士に依頼して、裁判所に返還請求を申し立てることになります。
他の債務整理であれば同時に過払い金請求もできるため、特定調停ならではのデメリットと言えるでしょう。
特定調停を行う際の注意点
次に、特定調停を行う際の注意点を解説していきます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
返済に遅れると強制執行になる
特定調停を行うと、残っている借金を3〜5年かけて返済していくことになります。
つまり、借金総額の3%程度は毎月返済することになりますが、もし返済に遅れてしまうと強制執行となるでしょう。
なぜなら、特定調停が成立すると、裁判所が「調停証書」を作成するからです。
債権者が執行執行を申し立てる際に必要な文書で、法的な効力を持っています。
もちろん支払い計画通りに返済を進めていけば問題ありませんが、少しでも遅れてしまうと強制執行となる可能性が高いです。
任意整理は裁判所を通さない手続きなので、調停証書が作成されることはありません。
特定調停に失敗して返済額が増える可能性がある
特定調停は「債権者」と「債務者」が調停委員の元で話し合いをする手続き方法で、あくまでも交渉をするのは債権者本人なので成功率は高くありません。
そのため、特定調停が失敗した場合のリスクも知っておくべきです。
特定調停の手続きを進めている期間の未払い利息や遅延損害金は今まで通り発生するため、返済額が増えてしまう可能性もあります。
特定調停の件数は毎年減少している
特定調停の利用者は、平成15年がピークで54万件以上の申し立てが行われていました。
しかし、平成15年以降は毎年減少しており、令和2年では2,400件程度になっています。
任意整理は裁判所を通さないため正確な件数はわかりませんが、年間200万件以上は行われていると言われています。
それほどまでに特定調停のメリットは小さく、借金問題に悩んでいる人のほとんどが任意整理を選んでいるのです。
特定調停のメリット・デメリットに関するよくある質問
最後に、特定調停のメリット・デメリットに関するよくある質問について回答していきます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
家族の代理として特定調停をするのは可能ですか?
A.家族の代理人として特定調停を行うのは、原則として不可能です。
借金問題に困っている親族がいるため、代わりに特定調停をしたい人もいるでしょう。
しかし、特定調停は債権者本人が申し立てる手続きで、法的な代理権がない限りは代理人を認めていません。
特定調停をすると官報に掲載される?
A.特定調停をしても、官報に掲載されることはありません。
債務整理で官報に掲載されるのは「個人再生」と「自己破産」の2つだけです。
もし「個人再生」と「自己破産」を行うと、債務整理をした経歴や氏名、住所などが官報に掲載されます。
また、「任意整理」も特定調停と同様に官報には掲載されません。
特定調停は弁護士・司法書士に依頼できる?
A.特定調停を弁護士・司法書士に依頼するのは可能です。
弁護士・司法書士に特定調停を依頼すると、書類作成の代行や手続きをスムーズに進めるためのアドバイスをもらえるでしょう。
ただし、弁護士・司法書士に依頼すると、債権者1社につき4万円程度の費用がかかります。
特定調停で借金の減額や免除には期待できないため、むしろ返済額が増えてしまう可能性が高いです。
自分で特定調停の手続きを進める自信のない人は、弁護士・司法書士に任意整理を依頼したほうがいいでしょう。
特定調停とは?メリット・デメリットまとめ
特定調停のメリット | 特定調停のデメリット |
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この記事では、特定調停の基本的な概要とメリット・デメリットについて詳しく解説しました。
特定調停とは、債権者と債務者が話し合って、支払い方法を調整する手続きのことです。
「債権者と債務者の話し合いで解決する」という点は任意整理と同じですが、特定調停の場合は裁判所の介入があります。
また、他の債務整理と比べて費用が非常に安く、債権者1社につき1,000円程度しかかかりません。
ただし、弁護士・司法書士に依頼しない人がほとんどなので成功率が低く、ほとんどのケースが失敗に終わっています。
今すぐ確実に借金の負担を減らしたい人は、特定調停よりも任意整理を検討してください。
まずは、自分にとってどの債務整理が最適なのかを専門家に判断してもらいましょう。